「もののけ姫」の前奏って幻想的で良いなぁ。どんなコードなんだろう?ということで、前奏だけコード分析をしてみました。
久石譲さんの作る曲は素敵で、奥深いものを感じます。ハウルの動く城の「人生のメリーゴーランド」とかも良いですよね。
今回は、「もののけ姫」の前奏で使われている5つのコードに絞って分析していきたいと思います。
5つのコード、しかも分類するとさらに2種類にまとめられてしまうのですが、それだけでもかなり深い内容になっていますので、どうぞご覧ください。
参考に原曲と異なりますが、「もののけ姫」の演奏動画を載せておきます。演奏も良いですが、米良美一さんの歌も素敵ですね。
「もののけ姫」のキー(主調)
「もののけ姫」のキー(主調)はCマイナー(ハ短調)です。となりのトトロの「風の通り道」と同じ調ですね。
ダイアトニックスケールは、
(C・D・E♭・F・G・A♭・B♭)
で、四和音のダイアトニックコードは、
です。
ですが、実は調性のないコードを使ったり、転調したりするので、あまりこれらの情報は役に立ちません(なぜ説明した…)。
コード分析
採譜してみると、このようになりました(己の耳で)。
コードを追ってみると、1~2小節目、3~4小節目、5小節目、6小節目、7~8小節目の5つに分かれていますね。
ではコードを1つずつ分析していきます。
1つ目のコード(1~2小節目)
1つ目のコードの構成音は次の通りになります。
度数: 1度・長2度(長9度)・完全4度(完全11度)・完全5度
そのままの譜面だと見にくいため、アルペジオは省略し、音声もピアノの音色に直しました。
コード名で表すとしたら、
・Csus4(9)
・Csus4add9
F系
・F(9,13)omit3/C
・F6add9omit3/C
D系
・Dm7(11)omit5/C
G系
・Gsus47/C
といった種類があります(他にもありそうです)。こうして見てみると種類がたくさんありますが、どれもパッとしませんよね。
これは、レ(D)・ド(C)・ソ(G)・ファ(F)と並べると4度間隔になり、四度堆積和音という表し方ができます。
四度堆積和音というのは、普通の和音は3度間隔の構造、例えばCM7だと構成音がド(C)・ミ(E)・ソ(G)・シ(G)となっていることに対して、4度間隔の構造になっている和音を指します。
また、ファ(F)・ソ(G)・ド(C)・レ(D)のように逆に積み重ねると5度間隔にもなるため、五度堆積和音ともいいます。
四度(五度)堆積和音の特徴としては、普通の和音と比べると3度の音(CM7で言うとミ)がないことから、メジャーコードの明るい印象、マイナーコードの暗い印象がないため、無機質だったり、幻想的な印象があります。
ただし、今回はクローズドボイシングで、かつ、転回系の分数コードになっているため、あまり四度堆積和音感がないように思えます。
四度堆積和音を表す場合、普通の三度堆積和音のコード名にはできますが、そのコード名から響きが連想しにくくとても不便です。なにか代替方法があるわけでなく、五線譜から想像するしかないという苦行です。
(何か良い表し方があればぜひ筆者まで教えてほしいのです…)
2つ目のコード(3~4小節目)
2つ目のコードの構成音は次の通りです。
度数: 完全1度・長2度(長9度)・完全4度(完全11度)・完全5度
コード名は、
・B♭sus4add9
・B♭sus4(9)
C系
・C(9,13)omit3/B♭
・C6add9omit3/B♭
E♭系
・E♭m7(11)omit5/B♭
F♭系
・Fsus47/B♭
ですね。1つ目のコードから1度下降しただけとなります。
一応、4度間隔に並び替えをしてみますが、ド(C)・ファ(F)・シ♭(B♭)・ミ♭(E♭)となり、やはり四度堆積和音ですね。
印象としては、コード単体では変わらないですがコード進行を踏まえると、どちらも無機質なせいかコード進行をしたのにもかかわらず、調性が感じられないですね。
3つ目のコード(5小節目)
3つ目のコードから構成音が増えます。次の通りです。
度数: 完全1度・完全5度・長7度・長3度・長6度(長13度)
一時的に転調したため、調号から♭を取っちゃいました。
コード名で表すと、
です。
M7(13)ってこんな音だったっけ?という感じですが、これはオープンボイシングになって、隠れている四度堆積和音が表面化したから、と言えるようです。
構成音を見てみると、シ(B)・ミ(E)、レ#(D#)・ソ#(G#)・ド(C#)と2つのグループがそれぞれ4度の間隔となっていて、四度堆積和音を組み合わせているということになります。四度堆積和音は組み合わせて使うことができます。
組み合わせができるとなると、もうこれはコード名に表すのも、耳コピするの大変になってきますね。音楽は奥が深い…。
4つ目のコード(6小節目)
これもまた、3つ目のコードから1度上げたものになります。構成音は次の通りです。
度数: 完全1度・完全5度・長7度・長3度・長6度(長13度)
コード名は、
ですね。
4つ目のコードから1度上がっただけなので、コード単体の性質としては同じですが、前のコードから転調している影響で浮遊感がありますね。
5つ目のコード(7~8小節目)
最後のコードですね。構成音は次の通りになります。
度数: 完全1度・完全5度・長7度・完全4度(完全11度)
コード名は、
です。シンプルですね。
実はこれ、1つ目のコードと構成音が全く同じ(ルートは違う)で、四度堆積和音です。
こちらの方が1つ目のコードと比べると、四度堆積和音感があると思います。明るくも暗くもない、ただ透き通っている感じ、とでも言いましょうか。
ここからは若干蛇足ですが、最初の方にあげたYoutubeの動画では、このコードの後にG7(b13)が来るので結局sus4じゃねーか、という意見もあるかと思いますが、sus4というのは四度堆積和音と言ってよいと思っています。
なぜかsus4を変化和音だとか言って別にしたがる勢力がありますが、そもそも和音というものは近い音に引っ張られる引力があるため、あまり意味のない概念だと思っています。
まとめ
まとめると、
・四度堆積和音は4度間隔の和音
・四度堆積和音は組み合わせて使われる
でした。
音楽理論はなかなか理解しにくいうえに、色々なジャンル、流派の隔たりがある中で体系化されていない部分が数多くあります。
そのためここに書いてあることが正しいか、というよりこういう見方もあるか、という感じで読んでいただければ幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!良き人生を!
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