2026年8月24日、消費者庁の「デジタル取引・特定商取引法等検討会」で、インターネット取引におけるダークパターンへの対応を含む中間取りまとめ案が示された。
まだ法改正が成立したわけではないが、内容を読んでいてかなり気になった部分がある。
最終確認画面について、
- 支払総額の表示
- 重要な取引条件を一体として把握できる表示
- 「取引条件の分離表示」の禁止
などを、今後より明確に規律すべきだとしている点だ。
なぜ気になったのか。
つい先日、U-NEXTの31日間無料トライアルをめぐって、まさにこれに近いと感じる体験をしたばかりだったからだ。
「無料トライアル後に有料になる」ことが問題だったわけではない
2026年6月21日、U-NEXTの「31日間無料トライアル」に登録した。
無料期間は7月21日まで。
その後、Amazon Payを通じて次の請求が発生した。
- 7月22日:2,189円
- 8月1日:2,189円
合計4,378円。
ここだけ見ると、「無料期間中に解約しなかったのだから有料になっただけでは?」と思うかもしれない。
しかし、私が問題にしたのはそこではない。
7月22日に2,189円を満額請求され、そのわずか約10日後の8月1日に再び2,189円を満額請求される
という請求構造だった。
7月22日から7月31日までは10日ほどしかないが、日割りにはならない。
そして翌月1日には、もう次の1か月分が発生する。
私は、無料期間終了後に有料契約へ移行すること自体は理解していた。
一方で、この具体的な課金スケジュールを申込確定前に認識した記憶はなかった。
そこで調べることにした。
現在のU-NEXTの最終確認画面を実際に確認してみた
当時の画面は保存していなかったため、後日、改めてU-NEXTの登録手続きを申込確定直前まで進め、現在の最終確認画面を保存した。
画面には、確かに次の内容が表示されている。
- 無料トライアル付月額プラン
- 無料期間終了後は自動更新
- 解約されるまで月額2,189円が発生すること
- 無料で解約できる期限
つまり、「ずっと無料だと思わせる」といった典型的な隠れ定期購入ではない。
月額料金も自動更新も書いてある。
では、いつ請求されるのか。
これについては、最終確認画面上に具体的な請求日程が並んでいるわけではなかった。
「支払時期はこちら」
というリンクになっている。
リンク先へ進むと、「請求のタイミング、解約後の請求について」というFAQが表示される。
しかしそこでも、無料トライアル終了後の初回請求については、
「初回請求についての詳しい説明はこちら」
と、さらに別ページへのリンクになっていた。
つまり現在の画面構造では、
最終確認画面
→ 支払時期はこちら
→ 支払方法別の説明
→ 無料トライアル終了後の初回請求はこちら
という形で、課金に関する情報が複数のページへ分かれている。
消費者庁が今回問題にしている「分離表示」
そして8月24日に示された消費者庁の中間取りまとめ案には、次のような問題認識が書かれている。
現在のインターネット取引では、支払総額、契約期間、解約条件などの重要な取引条件を一体として把握しにくい表示が見られるようになっているという。
その対策として、最終確認画面について、支払総額の表示や、取引条件の分離表示の禁止など、表示方法そのものを義務付けるべきとしている。
これを読んで、今回のU-NEXTの画面を思い出さない方が難しかった。
もちろん、消費者庁がU-NEXTを「ダークパターン」と認定したわけではない。
私も、現在のU-NEXTの画面が直ちに違法だと断定するつもりはない。
ただし、「料金そのものは書いてある。しかし、その料金が具体的にいつ発生するのかという重要な条件はリンク先へ分散している」という構造は、今回消費者庁が問題として挙げた「重要な取引条件を一体として把握しにくい表示」「取引条件の分離表示」という論点と非常によく重なる。
今回のように、
7月22日 2,189円
↓ 約10日
8月1日 2,189円
という請求になるのであれば、その情報は「どこかを辿れば書いてある」というだけでなく、契約を確定する時点で分かりやすく表示されていてほしい。
少なくとも私は、そこを契約判断上かなり重要な条件だと考える。
U-NEXTに「当時の最終確認画面」を求めた
そこでU-NEXTにも問い合わせた。
単に「知らなかったので返金してほしい」と伝えたわけではない。
具体的には、
- 2026年6月21日時点の最終確認画面
- 当時の画面が残っていなければ、画面仕様、テンプレート、HTML、キャプチャ等
- 無料期間終了後の有料移行時期
- 初回2,189円
- 日割りされないこと
- 8月1日に再度2,189円が発生すること
- 以後毎月1日に自動更新・課金されること
が、申込確定前のどこに、どのような文言で表示されていたのかを回答してほしいと求めた。
U-NEXTから最初に返ってきた回答は、
「キャンペーン要項および利用規約のリンクを明示している」
「無料期間を超過した場合は満額の料金が発生することを記載している」
というものだった。
しかし、私が確認したかったのは「規約のどこかに書いてあるか」ではない。
申込確定前の最終確認画面で、実際の請求構造を容易に認識できたのか
という点だった。
そこで再度、当時の最終確認画面そのものや、具体的な表示位置を回答するよう求めた。
最終確認画面については最後まで具体的な回答なし
その後、かなり時間がたってからU-NEXTから再び回答があった。
しかし、そこでも当時の最終確認画面そのものは示されなかった。
再びキャンペーン要項を示した上で、「申込みの際に確認いただけていなかったという状況でしょうか」という趣旨の回答だった。
一方で、U-NEXT側でも利用状況を確認した結果、無料期間終了後の視聴履歴が確認できないとして、今回に限る対応として返金を行うとの回答があった。
返金対象は、
- 2026年7月分:2,189円
- 2026年8月分:2,189円
合計4,378円。
Amazon Payを通じて全額返金されることになった。
なお、U-NEXTが「最終確認画面の表示に問題があった」と認めて返金したわけではない。
あくまで、本来は支払対象だが、利用状況を考慮し今回に限って返金するという扱いだった。
そのため、この返金自体を「U-NEXTが表示の問題を認めた証拠」とすることはできない。
「書いてある」だけでは足りない時代へ
今回の件で一番引っかかったのは、情報が完全に存在しないわけではなかったことだ。
調べれば、U-NEXTのFAQには請求タイミングの説明がある。
キャンペーン要項にも条件が書いてある。
しかし問題は、契約する人が、その重要情報を契約確定前にどれだけ容易に把握できるのかだと思う。
インターネットサービスでは、利用規約やFAQの奥まで探せば、ほとんどのことはどこかに書いてある。
だから「どこかに書いてあります」だけを基準にしてしまえば、重要な情報を見つけにくい場所へ置いても形式上は説明したことになってしまう。
UIは単なる見た目ではない。
何を大きく表示するか。何を同じ画面に置くか。何をリンク先へ移すか。契約ボタンの直前に何を見せるか。
そうした設計そのものが、利用者の意思決定に影響する。
これが、いわゆるダークパターンが問題になる理由だろう。
今回の消費者庁の中間取りまとめ案でも、オンライン上の表示やUIによって消費者の意思決定が歪められる問題を取り上げ、個別の手法を列挙するだけではなく、ある程度包括的な規律を検討すべきとしている。
そして最終確認画面についても、重要な取引条件を一体として把握できるようにし、「分離表示」を規制する方向が示された。
今回私がU-NEXTで体験したことが、将来の法制度上どのように評価されるかは分からない。
ただ、
「料金は書いてあるから問題ない」
「詳しい条件はリンク先に書いてあるから問題ない」
だけでは済まない方向へ、制度が動こうとしていることは確かだ。
契約の条件は、存在するだけではなく、契約する瞬間に理解できる形で提示されるべきだ。
今回の4,378円という金額自体は大きくない。
しかし、同じUIを何万人、何十万人が通るオンラインサービスでは、一人当たり数千円の「分かりにくさ」でも、その影響は小さくない。
だからこそ、ダークパターンを個人の「ちゃんと読まなかった」で終わらせず、UI設計の問題として扱う今回の議論には意味があると思う。



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